養豚場 ざんちょ。 『ようとん場MIX(養豚場ミックス) 攻略』ぶた図鑑2巻編

『ようとん場MIX(養豚場ミックス) 攻略』ぶた図鑑2巻編

養豚場 ざんちょ

美味しいがわからないカフェのマスターと 音符の見えない作曲家と 言葉で伝えられない写真家と 触れる手の柔らかさがわからない便利屋の、あたたかでいつもの朝ごはんのお話。 本作に関しては決してお名前をお借りしております方々及び、身体に障害をお持ちの方々を中傷、軽んじる意向はない旨、ご理解いただければ幸いです。 並びに、誹謗・中傷の目的で書かれたものではないことをご理解ください。 なんでもない日、今日。 [newpage] 朝を知らせる鳥がやっとこさ鳴き始めた、お日様もまだまだ眠たげな時間。 「うへぇ、さっぶぃ~」 首に巻いたストールを手繰り寄せ、部屋の端へと足音を鳴らす。 駆け寄った先にある年の過ぎ去りを感じさせる哀愁と趣ある重厚感を持って鎮座しているそれは、どれだけ磨いても煤のお化粧がぶ厚いおばあちゃんストーブだ。 「おはよ、今日も美人さんだな!」 朝の挨拶をしながら、火種となる小枝を組んでいく。 いつの間にか習慣となっていたおばあちゃんへの挨拶は、誰が始めたのか。 草木に水をやるように毎日毎日、皆で声をかける。 おかげ様で、今日もあったかいっす。 美味い芋が焼けたわ、サンキュ。 今日もお疲れ様でした、ありがとう。 そうやって声をかけながら火を灯すと不思議と火の付きが良く、部屋への熱がご機嫌に広がる気がするのだ。 聞いたことない?物にもね、大事に大事にすると、心が宿るんだって。 ふくふくと柔らかに揺れるFBの声が、耳の奥をくすぐる。 ふふっ。 つられて笑いながら順に大きめの薪をくべれば、おばあちゃんもつられたみたいだ。 パチリッパチリッと品のいい笑い声が、部屋に優しく広がってゆく。 うん、今日もご機嫌みたいだ。 よかったよかった。 しばらく楽しげに揺らぐあかいろを眺めていたが、熱の前から動きたがらない足を叱咤してキッチンへ向かう。 あろまが買ってきてくれたアルパカのスリッパがもふりもふりと床を跳ねた。 さて、朝食の献立はどうするか。 FBが誕生日にくれた黒のエプロンを手に取って、リビングを見回す。 まだ寝ぼけまなこな太陽の淡い光に浮き出され、えおえおが一目惚れした妙にリアルなクマのクッションがソファーの上から静かにこちらを伺っていた。 おはよー、オマエも何か食う? 昨日仕込んでおいたサラダとパエリアとスープをそれぞれ取り出し、温めるものは火にかける。 あと一品欲しいかな。 ちょうど昨日、カフェの常連さんから貰ったベーコンと卵があるから、新鮮な内に頂こうか。 シンプルにベーコンエッグがいいかな。 ほくほくとしながら冷蔵庫からベーコンと卵を取り出して、コンロにフライパンを用意する。 フライパンを火にかけながら包から取り出したベーコンは肉厚で、赤身と脂身のコントラストとが艶やかに目に焼き付き、このままかぶりつきたくなるような艶めかしさで誘惑してきた。 さっすがその道三十年のベテラン養豚職人の愛を注がれた豚さんだ。 朝食に使い切るにはもったいない気がする。 肉厚な二枚を縦横半分に切って、残った分はバーの一品として取っておこうかな。 残り分をこそっと冷蔵庫の奥に忍ばせてからコンロを伺えば、いい具合にフライパンから熱が伝わってくる。 そこにオリーブオイル薄く広げ、ベーコンを重ならないよう並べていく。 気持ちは某ジ〇リ作品の、イケメン魔法使いだ。 じゅわっと油を跳ねさせ、早速色味を増してきたベーコンの艷やかさに蕩けるように見惚れていれば、ガチャリっと扉が開く音がした。 続いて響いた床を叩く音に振り返る。 そこには見慣れたサングラスの男が、コツッコツッと足元を白い杖で叩きながらキッチンに入ってくるところだった。 おっ、同居人第一号のお目覚めだ。 さてさて、愉快な朝食が、そろそろ始まる。 [newpage] 「おはよー、FB」 「おはよう、きっくん」 挨拶と共にこちらに伸ばされた手に、火を止ながら背をかがめる。 頬に触れた手が、額に、首筋に、肩に、撫でるように触れるのをその手が満足するまで待てば、手のひらと同じ柔らかに頬を緩めてFBが笑う。 「うん、きっくんは今日も元気だね!」 「おう!俺様は毎日がスーパーディだからな!!」 「ガハハっ、それは逞しいですなぁ!何か手伝えることはある?」 「うーん、あとはベーコンと卵を焼くだけだから特にないぞ!」 「りょーかい!じゃあ、箸だけ並べておくねぇ~」 再び杖で床を叩き、引き出しから四膳の箸を取り出してテーブルへ向かう。 そうして一つ一つの箸の彫り絵を指先で確かめながら、それぞれの持ち主の席へと並べていく。 ねーこさんはあろま、とーりさんはきっくん、しーかさんのえおえーお、わーんちゃんのおーれ。 じゃれあうように心地よく響くハミングが、柔らかに食卓に広がる。 それに耳を傾けながらフライパンの火をつけ直し、蓋を上げればむわりと顔を覆う湯気の先でパチリッと香ばしい赤色が弾ける。 よしよし、いい色だ。 ヘラでベーコンをひっくり返して、ちょうどいい位置に卵を四つ。 再び蓋をすればガチャリと二度目の扉が開く音に、ストーブで温められた空気が揺れる。 振り返れば眠たげなあかいろが、ぐぅっと背を伸ばしながら冷蔵庫からペットボトルを取り出していた。 「おはよー、あろま」 「…………」 軽く手をあげて口を開いたと思ったら、おおきなあくび。 昨日塀の上で見た、猫さんのような呑気なあくびだ。 「珍しく早起きだなぁ。 今日はぴーすけちゃんのとこ?」 こくりと縦に首を降ったあろまは、眠気覚ましのつもりかコップに注いだ水を一気に飲み干す。 それでもまだ眠たげに目をこする彼の鼻先にそっとスプーンを寄せれば、おとなしくぱくりと開いた口。 子猫みたいだと笑いながら掬ったスープをふくませた。 しばらくすると、落ちかけた瞼がふるりと揺れる。 どうやらお気に召したようだ。 「ヨッシャ!今日のカフェスープは決まりだな!いつもありがとなぁ。 俺じゃあ味わかんないから、調整してもらえるの助かるわ!」 お礼も兼ねて、星型の人参を掬っては口の中に放り込んでやる。 花を飛ばしながら再びもごもごとするあろまに満足気にうなづいていれば、くいっと手を引かれた。 引かれるままに差し出した手のひらを、トンッと柔らかい指先が叩く。 ふふっ、そっか。 ありがとう!」 トンッと手のひらを叩く指先とそれが伝えてくれた言葉のくすぐったさに笑えば、あろまも優しく笑いかえしてくれる。 握られた手も、その笑顔も、あったかい。 うん、あったかいなぁ。 あったかさに頬を緩めれば、ふいに目をそらしたあろまは手近にあったサラダが盛り付けられたボウルを持って、テーブルへ向かっていった。 寝癖がはねた髪からのぞく耳が赤いのがバレバレですよ、あろまさん。 楽しい朝食を予告するように、パチリッと色づくベーコンが笑った。 さてさて、賑やかな朝食がそろそろ始まる。 [newpage] テーブルにボウルを置き、そのままいつもの席につく。 音に反応したのか、ノートパソコンを使って作業をしていたFBが顔を上げた。 「おはよう、あろま」 「…………」 挨拶と共に伸ばされた手に、眉根をぎゅっとさせながら顔を寄せる。 中途半端に腰を曲げるのは少し苦しいが、ため息をのみこんで頬を撫でる手が満足するまでおとなしく身をゆだねる。 無遠慮に触れられるのは正直好きではないが、FBのこれは、ただのスキンシップではない。 目が見えない分触覚が鋭敏になっているその指先で、肌のはりや体温、脈拍を確認し、いわゆる触診のようなものでオレたちの健康状態を確認している。 触診とはいうもののFB自身に医学の知識は無い。 それでも、 「あぁ、よかった!昨日まで少し熱っぽかったけど、今日は治まってるみたいだね。 最近雪の中での撮影が多いから、風邪には気をつけなきゃダメだよ?」 確かに、最近身体がだるく感じる事はあった。 もちろんFBにも誰にも言ったことは無い。 が、どうやらバレバレだったようだ。 お前はオカンか。 「珍しくネクタイ締めてるみたいだけど、今日は撮影の日?」 ふるりと首を振って、頬に添えられままの手をとる。 その上をトントントンッと指先で叩けば、あぁ、とFBがにこやかに笑った。 「そっか、写真集の新刊の発売日がもうすぐだっけ!打ち合わせは、ぴぃちゃんも一緒に?」 『まぁな。 なんかぴぃが張り切っててさ』 「そりゃあ大好きなお兄ちゃんの写真集だもん。 敏腕出版社員としては、張り切るでしょうよ」 『……そういってアイツ、最近会社に泊まり込みで家にも帰ってねぇ』 「そういえば、変わらずランチ時間には来てくれるけど、十分もせず帰っちゃうってきっくんが言ってたような……」 『…………』 「そうだ!ねぇあろま、打ち合わせが終わったら、ぴぃちゃんを誘ってきなよ!」 『…………!』 「久しぶりに、みんなできっくんのおいしいごはん食べようよ!ねっ?」 『うん……サンキュ』 オレ、おいしいサラダが食べたい。 そうリクエストすれば、FBがくふくふ笑いながらきっくんに伝えてくれる。 そうするとキッチンから元気のいい笑顔が覗いてきた。 遠くからでも見えやすいようになのか、大きく動いた口から『きっくん特製、古に伝わりしスーパー栄養マンスペシャルメニューにするな!』とぴょんぴょん跳ねまわる、音のない言葉が踊る。 相変わらず意味はわからないが、美味しいごはんを作ってくれることは間違いない。 おう、夜が楽しみだわ。 感謝の言葉を机を叩くリズムで伝えれば、今度は親指をたてた手が力強く突き出してきた。 待てよ、これ、逆に張り切り過ぎて五人では食べきれない大量の料理を生み出さないよな?それはそれで自分が処理してもいいが、予定が空いるようならミクとメグも誘おうか。 ひとまずLINEだけ送っておこうとスマホを取り出せば、リビングの扉が開く。 そこから瞼を擦りながら、いまにも立ったまま寝息をたてそうな男が顔を出した。 どうやら最後の住人も起きてきたようだ。 さてさて、騒がしい朝食が、そろそろ始まる。 [newpage] 「おはよー、えおえお」 「おはよ、きっくん」 ふらふらと頭を揺らしながらなんとかシンクまでたどり着けば、苦笑いを浮かべたきっくんが首に巻いていたストールをオレの肩に掛けてきた。 えっ、ナンデスカ?いやいや、なんで真冬に半袖だよ、見てるこっちが寒いわ。 と、母親のようなお節介に、首をひねりながらもおとなしく引っ掛けたたままにする。 今日、そんなに寒いんだ。 「あれ?あろまがスーツ着てる。 仕事?」 「今日は出版社で打ち合わせみたいだぞぉ。 えおえおは?朝から仕事?」 「うん。 隣町のじいちゃんとこの、牛の世話の手伝い」 「あぁ、じいちゃんとこの息子さん、いま出張中だもんな。 それだけ?」 「その後も何件かあるけど……なに?今日なんかあったっけ?」 「ちょうどいまさ、晩飯にぴーすけちゃん誘おって話してたのよ!えおえおは帰り遅くなりそう?」 「いや、たぶん夕方くらいには帰ってこれると思うよ」 「おっ、じゃあちょうどいいな!なんかリクエストある?」 「うーん、なんでもいいけど……おにぎり作るなら、具はおかかと肉味噌がいいっす」 「ははっ、りょーかい!」 きっくんが両手で作った三角形を覗き込みながら無邪気に笑う。 あっ、まずいこれ、あれだ。 前にロシアンルーレットたこ焼きをしれっと出してきた時と同じ顔してる気がする。 しまった、余計な助言をしてしまった。 変なもの入れないように後であろまに見張りを……あれ?あろまも仕事って言ってたから、今日家に居るのはもしかしなくとも、昨晩家にこもって作曲に専念すると言っていたFBだけ……。 瞬間的に脳裏に浮かんだ、二人でプリンを作ったと言って差し出されたブルーオーシャンプリンとレバープリンという名の劇物デュエット。 芋づる式に引っ張りだされるその他もろもろの産物の記憶に当時の惨劇を思い出しては、胃がキリキリと音を立てる。 今日帰りに、胃腸薬買っとこうかな………。 「あんま、無茶なことはするなよ……」 「ん?何か言ったぁー?」 「イエ、ナンデモナイデス。 しっかし、いっぱい作ったなぁ。 どれ持ってけばいい?」 「あっ、じゃあそこのパエリアお願い!」 「はーい」 指さされたコンロ上の鉄鍋のを覗き込んで、思わず感嘆のため息がこぼれる。 目の覚める艶々と輝く金色の米をキャンパスに、鮮やかな赤と黄色のパプリカ、瑞々しい海老とアサリが彩り良く並べられ、更にパセリの緑色が全体の色を締めるように散らされている。 鉄板を持ち上げれば、サフラン独特の華やかな香りと魚介の芳ばしい香りが鼻先をくすぐり、その美味なる味を脳裏に呼び起こす。 思わずごくり、と喉が鳴った。 腹をきゅるきゅると鳴らしながら運んだ鍋をテーブルの上の鍋敷きに置けば、既に席に付いていた二人がそれぞれに、朝の挨拶を投げかけてくれる。 「おはよう、えおえお」 「…………」 「おはよ、FB、あろま」 いつも通りに軽く声をかければ、柔らかな頬にふくりと幸福を含ませて、FBが笑う。 なんだかいいことがあったようだ。 たぶん、ぴーすけが来るからかなぁ。 妹分として可愛がっているぴーすけが、最近忙しくて遊びに来れないことを前にいじけてたしな。 微笑ましい気持ちになりながら、席に着こうと顔を上げる。 途端、視線の先であかいろがびたりッ、と瞬きを止めて固まっていた。 えっ、なに?おい、どうした。 「あろ「あぁーーーーーー!!!」まおぉう?」 あろまに声をかけようとした途端、キッチンからきっくんの雄叫びが響きわたる。 うるせぇーな。 なにごとかと振り返れば、驚き顔のきっくんが目を見開いて鍋つかみを握りしめていた。 なんだ?鍋つかみに黒光りする悪魔でも潜んでたのか? 「え、お、え、おぉおお!!!」 悪魔じゃなかった。 えっ、おれ?おれですかナンデ? カッ!っと見開くきいろに昨晩のホラゲのキャラを思い出しそうになって反射で目をそらせば、そらした先でもクワッ!っと歯をむくあかいろが背後に般若を背負っているではないか。 うえっ、こわい。 般若の目から逃れるようにさらに首ごと目をそらせた先で、きっくんの声に反応したFBが何事かと手を伸ばしてぱたぱたとさせていた。 おいやめろ、勢いあまって皿に当たりそうだ。 悲惨な未来を防ごうとFBに伸ばした手は、けれど細い腕に横からかっ攫われそのままキッチンへと連行されてしまう。 訳も分からず引かれるまま、代わりにFBに声をかけて止めてくれたきっくんを手を引くあろま越しに見上げれば、苦笑いをこぼしたきいろが細まる。 待て、その呆れ顔はなんなんだ。 状況の説明をしてくれ。 そのまま有無を言わさず引っ張られた手はシンクに突っ込まれ、手のひらに大量の水が注がれる。 何がなんだか分からずそれをぼんやりと見つめていると、ドンッ、と、背中からの衝撃に内蔵が揺れた。 おぅあぁ?痛くはないが、いま背骨から変な音したぞ。 『こんの、バカ!鳥頭かよクズ!!』 「えっ、なに」 『鍋を掴む時は鍋つかみ使えって、散々言ってたよなぁ!?』 「あぁ、まだ熱かったのか、アレ」 『ふざけんなボケジジィ!!』 背中を叩く手から体の内側に響くリズムに、彼らの反応の理由を理解する。 そういうことか。 背中の衝撃越しに、文字通り叩きつけられる説教を甘んじて受け入れながら振り返れば、きっくんがタオルと救急箱を用意してくれていた。 うっ、視線が痛い。 それに頷いたあろまが、再び手を引いてくる。 蛇口の下から出てきた手には鉄板の持ち手の形にくっきりと焼き跡がついていて、皮膚が赤く引き攣れて幾何学模様を作り出していた。 げっ、これ動かしづらくなるんだよな。 「もぉー鉄板持つときは気をつけろって言ってんでしょーが」 「しょうがないだろぉ。 熱いとかおれ、わかんねぇし」 嗜めるように額をつつくきっくんに唇を尖らせてすねて見せれば、柔らかく目尻を下げて頭を撫で回される。 やめろ、ガキ扱いすんな。 そんなやり取りを呆れ顔で見やりながら器用に包帯を巻いてくれたあろまは、薬を薬箱に戻しながら指先でトトトンッとキッチン台を叩いた。 『今日、ぴーすけ来るから』 「あぁうん、きっくんから聞い……あっ」 『ミクとメグも呼ぶから』 「えっ、ちょっとまっ」 『安心しろや。 その手の惨事については、オレから、直々に、事細かに、くわし~く伝えといてやるからよ』 「いやいらな」 『あ"ぁ"?』 「アッ、ハイ。 スミマセン」 しまった、これはまずい。 あろまの妹でおれらにとっても大切な妹分であるぴーすけはもちろん、FBの仕事がきっかけで友達になった大人気ネットアイドルユニット『BLUE』のミクとメグに、おれらはすこぶる弱い。 前に仕事で屋根から落ちて片足を変な方向に曲げたまま帰ったら、たまたま遊びに来てた彼女達にそれはもう大層可愛らしく叱られた。 ぴーすけは兄に似てしまった毒舌で罵りながら隠しきれない涙を必死にこらえてるし、対してミクは号泣しながら『いたっいたっ痛い、これ痛いですよね!?えっと、痛いの痛いの飛んでいけーー!私のところに飛んでこーい!!』と、歌姫の美声を持ってなつかしの歌 ? を唱えながら部屋中を跳ねまくるし、だが待て、おれに痛みはないから大丈夫だから年頃の女の子がそんな短いスカートで跳ねるんじゃありません落ち着けと、我ながら支離滅裂な説明をして宥めようと声をかけたら、メグが『コレ!コレ添え木!!添え木にできます!!』と割る前の太い薪木を抱えて来たところ、すっ転んでおれの額をへこませた。 なんというか阿鼻叫喚の図を作り出しながら治療してくれたのだが、その後も完治するまで忙しいだろうに、時間を作って家に通いつめてくれたのだ。 女の子を泣かせたという事実と可愛らしく叱る声とその後も心配をかけさせてしまった罪悪感で、一週間は夢にうなされた。 これは精神的に辛い。 再び訪れそうな 俺にとっての 地獄絵図に思わず口端を引き攣らせる。 やばい、逃げたい。 というかさっきからおれにとってやばいことしかないすでに辛い。 「あっあろまサン……この事はどうか内密に……」 『オレはいいけどぉ?お前、その手を見られて弁解できんのぉ?』 「ムリだわ」 『諦め早ぇえなオイ』 いいや、説明とかはFB辺りに押し付けて逃げよ。 浅はかな考えを読み取ったのかどうか、再び深々とため息を吐いたあろまに先導されてテーブルへ戻るれば、キッチンでの会話が聞こえていたのだろう。 既に今起こった出来事を察したFBが、あぁーあまたやっちゃったんですかぁーとからかい顔でこちらに手を伸ばしてくる。 うるせぇーとぶすくれながらその手に顔を寄せれば、きっくん曰くふくふくとしているという手が、ぺたぺたと触ってくる。 「うっわ、冷たッ!えっ!?腕冷たッ!ってなんで半袖なのさあんた!?」 「いや、適当にそこにあったから、着た」 「なんで真冬に半袖シャツ出して……いやそれを差し置いてもバカなの!?バカじゃないの!?外見てみろや身の毛もよだつ真っ白ワールド広がってんでしょが!」 「えっ、雪積もってんの?うわっ、移動面倒だなぁー。 ……んっ?てか、おまえも見えてなくない?」 「お黙り!口答えするんじゃありません!」 『オカンかよ』 呆れ顔のあろまに、心の中で激しく同意した。 しばらくじっとしてれば満足したのか離れたようとした手は最後にぺちりと額を叩いてきた。 「……なんだよ」 「手のことでぇ~す。 ごまかすの、手伝ってあげないからね」 「うぇー?ナンデェー?」 「いやいや、自業自得でしょーよ。 ぴぃちゃん達にしっきゃりしきゃられなしぇー……」 「しっきゃり?」 『しっきゃられ?』 「なしぇーって、なにぃいぃ?」 「ガハハハハ!うるさいわ!」 再びぱたぱたと手を振り出したFBの手をあろまと止めれば、きっくんの手元のフライパンから、各席に並べられた皿にベーコンと目玉焼きが滑ってくる。 ぷるんと揺れた艶やかな黄身に忘れかけた腹の音が再び合唱を響かせた。 「あははっ!まぁとりあえず、ごはんにしようぜ!」 『うぇーい。 FB、茶はここに置いてっからな。 零すなよ』 「ありがと、あろましゃん!きっくん、今日のメニューは?」 「手作りドレッシングサラダにハムエッグにエビとホタテのパエリア!あとあろま絶賛の激うまコンソメスープ!!」 「いいねぇ!さっすがきっくん!」 『絶賛んぅ?そこまで褒めた覚えはねぇぞハゲ』 「あろま、俺にもお茶くれぇー」 「あっ、目玉焼きにかけるもんココに揃えてるぞぉ」 「あぁ、ありがときっくん」 「ケチャップくださーい」 「はいよ!」 『オレしょーゆ』 「はいはい!えおえおは今日はつける?」 「いや、今日はいいや……それよか、あのぉ、パエリアを箸で食うのは、さすがに無理がないっスかねぇ?」 「なんとかなるなる!」 『なんとかしろしろ』 「なせばなれだぞえおえお君!!」 「うぇー」 「ほいほーい!お前ら出揃ったかぁー」 「はーい」 「おーう」 『へいよー』 「そんじゃま、皆さんお手を拝借!せーの!!」 「「「『いただきまーす』」」」 なんてことない日の、お前らとの今日も格別賑やかな始まり FB!今日の晩飯のおにぎり、作るの手伝ってくれ! いいけど、具は何にするの? えおえおリクエストのやつと、定番梅干しさんと鮭フレさん。 えおえおーえおえおー!」 『うるせぇぞハゲ!』 「ほんとさ!」 「やったことは無いけど、とりあえず、火ぃ付ければいいんだべ?」 「えっ?何かきゃんがえがあんの、隊長?」 「あー……しらねぇ」 「ないんかーい!ちっとは考えろや!」 「うるせぇーじゃあなんか案があるなら言ってみてくださぁーい」 「…………」 「…………」 「ガハハハハッ!」 「なんだコイツ」 「ねぇねぇ見てみて!」 「なにかね、きっくん!」 「見ろよコレ、最強じゃね!?」 「はい?何が……ひぃ!!」 「いぇーい!チャッカメェーン!」 「あっぶな!!いきなり耳元で点けんなや燃やす気か!!」 「イェーイ!ヒュゥイゴー!!」 「きっくん、元気だなぁ」 「呑気か!もぉーさむいよぉー。 誰かホットドリンクくれよぉー」 「…………!」 ガサゴソ 「てかさ、こういうときはまず火種を「チャッカメェン二刀流ぅ!!」だぁー!遊んでないで聞けや!人の話をよぉ!!」 「えぇー、ダメぇー?」 「ダメとかひょういう問題!?こちとら死活問題やぞ!!」 「…………」 ひょい 「ん?あぁ、あろまか。 気まぐれで夜はバーとして開くこともある。 味が分からないため、カフェの料理はあろま FB・eoheohは味に対して大雑把なため に監修してもらい、あとは具材の色 焼き目や色の濃度 で判断している。 ほとんど店主の気分次第でメニューが変わるため、昨日食べたものが食べれるとは限らないが、どれを食べても美味しいため常連の足が耐えない。 とある研究所の薬物実験の後遺症で嗅覚を失う。 そのため味がわからず食事に一切の興味を持てずにいたところ、気まぐれでつくった料理を食べてFB達が笑ったのを見て本格的に作り始める。 というか俺がやらなきゃトンデモ料理制作人しかいねぇ!!お陰様で腕もあがり、その美麗な容姿もあいまって近所のご婦人方のアイドルとなっている。 FB777 職業:音楽家 症状:光視症 光が入りすぎるため、視界が白くなり目に激痛を伴う。 究極の意訳でたとえれば、高性能暗視スコープ 某にっこり投稿動画サイトにて細々と作曲した曲を上げていたところ、思わぬ所で当時動画サイト内にて歌唱力トップアイドルとされていたミクに見初められる。 彼女に請われ、こんな綺麗な声に歌ってもらえるならという軽い気持ちでいくつかの曲を作成したところ、年間TOP10を埋めるまさかの大ヒット。 そのままプロとしてメグとデビューしたミクに誘われ、「BLUE」の専属作曲家としてデビュー。 話題を呼び、その後はミク以外にも曲を作っていく。 普段はキーによって音が異なる自作パソコン Aはド、Sはミなど で作曲する。 きっくんに手伝ってもらった曲も多くある。 とある ryにて視覚を著しく弱める。 窓も証明もない地下のような場所ではハッキリと見える。 夜目に特化した分、光のある場所では眩し過ぎて何も見えず、激痛を伴う。 そのため常に瞳を閉じ、遮光性の高いサングラスで覆っている。 本人はそれほど不便に感じていないが、とても美しい青の瞳が隠されるてしまいつまらないと、あろまとえおえおがこっそりと不機嫌になったのことをきっくんは知っている。 aromahotto 職業:写真家 症状:聴覚障害 音が聞こえない、それに伴い言葉を発しづらい 現在様々な大手会社よりポスターの依頼や雑誌の特集を組まれる話題の風景写真家。 もともと旅好きで、その風景を家族へ伝える手段として写真をはじめる。 その、まるで語りかけるような光と影の世界と時折写り込む仲間の楽しげな後ろ姿が話題となり、若者から高年層にも好評となる。 とある ryにて聴覚を失う。 それに伴い、言葉を発音しづらくなった。 仕事場などでは手話で会話し、ぴーすけに通訳を頼むが、手話だとFBが分からないため、家ではモールス信号にて会話をする。 相手の言葉は読唇術にて読み取る。 話せなくなった事に関して本人は不便に感じていないが、少し高いその透き通る声がお気に入りだったFBから請われ、時折歌を歌うこともある。 eoheoh 職業:なんでも屋 症状:無痛症[? ] 痛み・感触・温度など、触れて感じる全てがわからない。 なぜか味覚だけはある 近所のおじさんおば様方から孫のように可愛がられているなんでも屋。 身体能力の高さと器用さの使い道を考えた結果、なんでも屋を始めたら思いのほか好評となった。 今や各方面から引っ張りだことなっている。 とある ryにて触覚を失う。 痛みや熱を感じないため、割と洒落にならない怪我をおうこともしばしば。 その度に仲間に怒られる。 けれどもともと自分に対して大雑把な性格なため、効果はお察しの通り。 身体能力の高さと痛みへの恐怖心のなさを生かしてなんでもこなしてしますが、頼むからもう少し体を大切にしてくれぴーすけ達を泣かすぞ。 大手編集社へ務め、あろまを写真界の時の人とすることに多いに腕を奮った敏腕編集者。 自他ともに認めるブラコン。 あろまが一番だが、負けないくらいFB達も大切で大好き。 自分がみんなに愛されていると自覚がある為、時に無茶なおねだりをすることも。 それを仕方ないなと笑いながら叶えてくれる家族が大好き。 ランチには必ずきっくんのお店へ食べにくる。 きっくんのご飯食べないと午後の業務なんてやってられないわよ!!仕事の関係で知り合った「BLUE」のミクとメグとは親友。 ミク 職業:ネットアイドル 愛らしい容姿と絶大な歌唱力をもってネットアイドルから世界へと羽ばたく現在人気ナンバーワンのアイドル。 某にっこり動画にて一目惚れならぬ一聞惚れをしたFBを探し出し曲作りを頼むなど、超アグレッシブ。 実はこっそりFBに想いを寄せており、割と周りにバレバレなのだが向けられている当の本人が欠片も気がついていないため今日も元気に恋する乙女は熱唱する。 はよ結婚しろ。 メグ 職業:ネットアイドル 爽やかな容姿と流暢な歌唱力をもって、ミクとともに世界へ羽ばたくアイドル。 もともとミクとは幼馴染の中で、ミクから誘われこの世界へ飛び込む。 ミクの恋を応援しているが、なかなか進展しない中にもやもやしつつ、二人らしいかとぴーすけと共に微笑ましく見守っている。 自他ともに認めるおっちょこちょい。

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#2 なんでもない日

養豚場 ざんちょ

美味しいがわからないカフェのマスターと 音符の見えない作曲家と 言葉で伝えられない写真家と 触れる手の柔らかさがわからない便利屋の、あたたかでいつもの朝ごはんのお話。 本作に関しては決してお名前をお借りしております方々及び、身体に障害をお持ちの方々を中傷、軽んじる意向はない旨、ご理解いただければ幸いです。 並びに、誹謗・中傷の目的で書かれたものではないことをご理解ください。 なんでもない日、今日。 [newpage] 朝を知らせる鳥がやっとこさ鳴き始めた、お日様もまだまだ眠たげな時間。 「うへぇ、さっぶぃ~」 首に巻いたストールを手繰り寄せ、部屋の端へと足音を鳴らす。 駆け寄った先にある年の過ぎ去りを感じさせる哀愁と趣ある重厚感を持って鎮座しているそれは、どれだけ磨いても煤のお化粧がぶ厚いおばあちゃんストーブだ。 「おはよ、今日も美人さんだな!」 朝の挨拶をしながら、火種となる小枝を組んでいく。 いつの間にか習慣となっていたおばあちゃんへの挨拶は、誰が始めたのか。 草木に水をやるように毎日毎日、皆で声をかける。 おかげ様で、今日もあったかいっす。 美味い芋が焼けたわ、サンキュ。 今日もお疲れ様でした、ありがとう。 そうやって声をかけながら火を灯すと不思議と火の付きが良く、部屋への熱がご機嫌に広がる気がするのだ。 聞いたことない?物にもね、大事に大事にすると、心が宿るんだって。 ふくふくと柔らかに揺れるFBの声が、耳の奥をくすぐる。 ふふっ。 つられて笑いながら順に大きめの薪をくべれば、おばあちゃんもつられたみたいだ。 パチリッパチリッと品のいい笑い声が、部屋に優しく広がってゆく。 うん、今日もご機嫌みたいだ。 よかったよかった。 しばらく楽しげに揺らぐあかいろを眺めていたが、熱の前から動きたがらない足を叱咤してキッチンへ向かう。 あろまが買ってきてくれたアルパカのスリッパがもふりもふりと床を跳ねた。 さて、朝食の献立はどうするか。 FBが誕生日にくれた黒のエプロンを手に取って、リビングを見回す。 まだ寝ぼけまなこな太陽の淡い光に浮き出され、えおえおが一目惚れした妙にリアルなクマのクッションがソファーの上から静かにこちらを伺っていた。 おはよー、オマエも何か食う? 昨日仕込んでおいたサラダとパエリアとスープをそれぞれ取り出し、温めるものは火にかける。 あと一品欲しいかな。 ちょうど昨日、カフェの常連さんから貰ったベーコンと卵があるから、新鮮な内に頂こうか。 シンプルにベーコンエッグがいいかな。 ほくほくとしながら冷蔵庫からベーコンと卵を取り出して、コンロにフライパンを用意する。 フライパンを火にかけながら包から取り出したベーコンは肉厚で、赤身と脂身のコントラストとが艶やかに目に焼き付き、このままかぶりつきたくなるような艶めかしさで誘惑してきた。 さっすがその道三十年のベテラン養豚職人の愛を注がれた豚さんだ。 朝食に使い切るにはもったいない気がする。 肉厚な二枚を縦横半分に切って、残った分はバーの一品として取っておこうかな。 残り分をこそっと冷蔵庫の奥に忍ばせてからコンロを伺えば、いい具合にフライパンから熱が伝わってくる。 そこにオリーブオイル薄く広げ、ベーコンを重ならないよう並べていく。 気持ちは某ジ〇リ作品の、イケメン魔法使いだ。 じゅわっと油を跳ねさせ、早速色味を増してきたベーコンの艷やかさに蕩けるように見惚れていれば、ガチャリっと扉が開く音がした。 続いて響いた床を叩く音に振り返る。 そこには見慣れたサングラスの男が、コツッコツッと足元を白い杖で叩きながらキッチンに入ってくるところだった。 おっ、同居人第一号のお目覚めだ。 さてさて、愉快な朝食が、そろそろ始まる。 [newpage] 「おはよー、FB」 「おはよう、きっくん」 挨拶と共にこちらに伸ばされた手に、火を止ながら背をかがめる。 頬に触れた手が、額に、首筋に、肩に、撫でるように触れるのをその手が満足するまで待てば、手のひらと同じ柔らかに頬を緩めてFBが笑う。 「うん、きっくんは今日も元気だね!」 「おう!俺様は毎日がスーパーディだからな!!」 「ガハハっ、それは逞しいですなぁ!何か手伝えることはある?」 「うーん、あとはベーコンと卵を焼くだけだから特にないぞ!」 「りょーかい!じゃあ、箸だけ並べておくねぇ~」 再び杖で床を叩き、引き出しから四膳の箸を取り出してテーブルへ向かう。 そうして一つ一つの箸の彫り絵を指先で確かめながら、それぞれの持ち主の席へと並べていく。 ねーこさんはあろま、とーりさんはきっくん、しーかさんのえおえーお、わーんちゃんのおーれ。 じゃれあうように心地よく響くハミングが、柔らかに食卓に広がる。 それに耳を傾けながらフライパンの火をつけ直し、蓋を上げればむわりと顔を覆う湯気の先でパチリッと香ばしい赤色が弾ける。 よしよし、いい色だ。 ヘラでベーコンをひっくり返して、ちょうどいい位置に卵を四つ。 再び蓋をすればガチャリと二度目の扉が開く音に、ストーブで温められた空気が揺れる。 振り返れば眠たげなあかいろが、ぐぅっと背を伸ばしながら冷蔵庫からペットボトルを取り出していた。 「おはよー、あろま」 「…………」 軽く手をあげて口を開いたと思ったら、おおきなあくび。 昨日塀の上で見た、猫さんのような呑気なあくびだ。 「珍しく早起きだなぁ。 今日はぴーすけちゃんのとこ?」 こくりと縦に首を降ったあろまは、眠気覚ましのつもりかコップに注いだ水を一気に飲み干す。 それでもまだ眠たげに目をこする彼の鼻先にそっとスプーンを寄せれば、おとなしくぱくりと開いた口。 子猫みたいだと笑いながら掬ったスープをふくませた。 しばらくすると、落ちかけた瞼がふるりと揺れる。 どうやらお気に召したようだ。 「ヨッシャ!今日のカフェスープは決まりだな!いつもありがとなぁ。 俺じゃあ味わかんないから、調整してもらえるの助かるわ!」 お礼も兼ねて、星型の人参を掬っては口の中に放り込んでやる。 花を飛ばしながら再びもごもごとするあろまに満足気にうなづいていれば、くいっと手を引かれた。 引かれるままに差し出した手のひらを、トンッと柔らかい指先が叩く。 ふふっ、そっか。 ありがとう!」 トンッと手のひらを叩く指先とそれが伝えてくれた言葉のくすぐったさに笑えば、あろまも優しく笑いかえしてくれる。 握られた手も、その笑顔も、あったかい。 うん、あったかいなぁ。 あったかさに頬を緩めれば、ふいに目をそらしたあろまは手近にあったサラダが盛り付けられたボウルを持って、テーブルへ向かっていった。 寝癖がはねた髪からのぞく耳が赤いのがバレバレですよ、あろまさん。 楽しい朝食を予告するように、パチリッと色づくベーコンが笑った。 さてさて、賑やかな朝食がそろそろ始まる。 [newpage] テーブルにボウルを置き、そのままいつもの席につく。 音に反応したのか、ノートパソコンを使って作業をしていたFBが顔を上げた。 「おはよう、あろま」 「…………」 挨拶と共に伸ばされた手に、眉根をぎゅっとさせながら顔を寄せる。 中途半端に腰を曲げるのは少し苦しいが、ため息をのみこんで頬を撫でる手が満足するまでおとなしく身をゆだねる。 無遠慮に触れられるのは正直好きではないが、FBのこれは、ただのスキンシップではない。 目が見えない分触覚が鋭敏になっているその指先で、肌のはりや体温、脈拍を確認し、いわゆる触診のようなものでオレたちの健康状態を確認している。 触診とはいうもののFB自身に医学の知識は無い。 それでも、 「あぁ、よかった!昨日まで少し熱っぽかったけど、今日は治まってるみたいだね。 最近雪の中での撮影が多いから、風邪には気をつけなきゃダメだよ?」 確かに、最近身体がだるく感じる事はあった。 もちろんFBにも誰にも言ったことは無い。 が、どうやらバレバレだったようだ。 お前はオカンか。 「珍しくネクタイ締めてるみたいだけど、今日は撮影の日?」 ふるりと首を振って、頬に添えられままの手をとる。 その上をトントントンッと指先で叩けば、あぁ、とFBがにこやかに笑った。 「そっか、写真集の新刊の発売日がもうすぐだっけ!打ち合わせは、ぴぃちゃんも一緒に?」 『まぁな。 なんかぴぃが張り切っててさ』 「そりゃあ大好きなお兄ちゃんの写真集だもん。 敏腕出版社員としては、張り切るでしょうよ」 『……そういってアイツ、最近会社に泊まり込みで家にも帰ってねぇ』 「そういえば、変わらずランチ時間には来てくれるけど、十分もせず帰っちゃうってきっくんが言ってたような……」 『…………』 「そうだ!ねぇあろま、打ち合わせが終わったら、ぴぃちゃんを誘ってきなよ!」 『…………!』 「久しぶりに、みんなできっくんのおいしいごはん食べようよ!ねっ?」 『うん……サンキュ』 オレ、おいしいサラダが食べたい。 そうリクエストすれば、FBがくふくふ笑いながらきっくんに伝えてくれる。 そうするとキッチンから元気のいい笑顔が覗いてきた。 遠くからでも見えやすいようになのか、大きく動いた口から『きっくん特製、古に伝わりしスーパー栄養マンスペシャルメニューにするな!』とぴょんぴょん跳ねまわる、音のない言葉が踊る。 相変わらず意味はわからないが、美味しいごはんを作ってくれることは間違いない。 おう、夜が楽しみだわ。 感謝の言葉を机を叩くリズムで伝えれば、今度は親指をたてた手が力強く突き出してきた。 待てよ、これ、逆に張り切り過ぎて五人では食べきれない大量の料理を生み出さないよな?それはそれで自分が処理してもいいが、予定が空いるようならミクとメグも誘おうか。 ひとまずLINEだけ送っておこうとスマホを取り出せば、リビングの扉が開く。 そこから瞼を擦りながら、いまにも立ったまま寝息をたてそうな男が顔を出した。 どうやら最後の住人も起きてきたようだ。 さてさて、騒がしい朝食が、そろそろ始まる。 [newpage] 「おはよー、えおえお」 「おはよ、きっくん」 ふらふらと頭を揺らしながらなんとかシンクまでたどり着けば、苦笑いを浮かべたきっくんが首に巻いていたストールをオレの肩に掛けてきた。 えっ、ナンデスカ?いやいや、なんで真冬に半袖だよ、見てるこっちが寒いわ。 と、母親のようなお節介に、首をひねりながらもおとなしく引っ掛けたたままにする。 今日、そんなに寒いんだ。 「あれ?あろまがスーツ着てる。 仕事?」 「今日は出版社で打ち合わせみたいだぞぉ。 えおえおは?朝から仕事?」 「うん。 隣町のじいちゃんとこの、牛の世話の手伝い」 「あぁ、じいちゃんとこの息子さん、いま出張中だもんな。 それだけ?」 「その後も何件かあるけど……なに?今日なんかあったっけ?」 「ちょうどいまさ、晩飯にぴーすけちゃん誘おって話してたのよ!えおえおは帰り遅くなりそう?」 「いや、たぶん夕方くらいには帰ってこれると思うよ」 「おっ、じゃあちょうどいいな!なんかリクエストある?」 「うーん、なんでもいいけど……おにぎり作るなら、具はおかかと肉味噌がいいっす」 「ははっ、りょーかい!」 きっくんが両手で作った三角形を覗き込みながら無邪気に笑う。 あっ、まずいこれ、あれだ。 前にロシアンルーレットたこ焼きをしれっと出してきた時と同じ顔してる気がする。 しまった、余計な助言をしてしまった。 変なもの入れないように後であろまに見張りを……あれ?あろまも仕事って言ってたから、今日家に居るのはもしかしなくとも、昨晩家にこもって作曲に専念すると言っていたFBだけ……。 瞬間的に脳裏に浮かんだ、二人でプリンを作ったと言って差し出されたブルーオーシャンプリンとレバープリンという名の劇物デュエット。 芋づる式に引っ張りだされるその他もろもろの産物の記憶に当時の惨劇を思い出しては、胃がキリキリと音を立てる。 今日帰りに、胃腸薬買っとこうかな………。 「あんま、無茶なことはするなよ……」 「ん?何か言ったぁー?」 「イエ、ナンデモナイデス。 しっかし、いっぱい作ったなぁ。 どれ持ってけばいい?」 「あっ、じゃあそこのパエリアお願い!」 「はーい」 指さされたコンロ上の鉄鍋のを覗き込んで、思わず感嘆のため息がこぼれる。 目の覚める艶々と輝く金色の米をキャンパスに、鮮やかな赤と黄色のパプリカ、瑞々しい海老とアサリが彩り良く並べられ、更にパセリの緑色が全体の色を締めるように散らされている。 鉄板を持ち上げれば、サフラン独特の華やかな香りと魚介の芳ばしい香りが鼻先をくすぐり、その美味なる味を脳裏に呼び起こす。 思わずごくり、と喉が鳴った。 腹をきゅるきゅると鳴らしながら運んだ鍋をテーブルの上の鍋敷きに置けば、既に席に付いていた二人がそれぞれに、朝の挨拶を投げかけてくれる。 「おはよう、えおえお」 「…………」 「おはよ、FB、あろま」 いつも通りに軽く声をかければ、柔らかな頬にふくりと幸福を含ませて、FBが笑う。 なんだかいいことがあったようだ。 たぶん、ぴーすけが来るからかなぁ。 妹分として可愛がっているぴーすけが、最近忙しくて遊びに来れないことを前にいじけてたしな。 微笑ましい気持ちになりながら、席に着こうと顔を上げる。 途端、視線の先であかいろがびたりッ、と瞬きを止めて固まっていた。 えっ、なに?おい、どうした。 「あろ「あぁーーーーーー!!!」まおぉう?」 あろまに声をかけようとした途端、キッチンからきっくんの雄叫びが響きわたる。 うるせぇーな。 なにごとかと振り返れば、驚き顔のきっくんが目を見開いて鍋つかみを握りしめていた。 なんだ?鍋つかみに黒光りする悪魔でも潜んでたのか? 「え、お、え、おぉおお!!!」 悪魔じゃなかった。 えっ、おれ?おれですかナンデ? カッ!っと見開くきいろに昨晩のホラゲのキャラを思い出しそうになって反射で目をそらせば、そらした先でもクワッ!っと歯をむくあかいろが背後に般若を背負っているではないか。 うえっ、こわい。 般若の目から逃れるようにさらに首ごと目をそらせた先で、きっくんの声に反応したFBが何事かと手を伸ばしてぱたぱたとさせていた。 おいやめろ、勢いあまって皿に当たりそうだ。 悲惨な未来を防ごうとFBに伸ばした手は、けれど細い腕に横からかっ攫われそのままキッチンへと連行されてしまう。 訳も分からず引かれるまま、代わりにFBに声をかけて止めてくれたきっくんを手を引くあろま越しに見上げれば、苦笑いをこぼしたきいろが細まる。 待て、その呆れ顔はなんなんだ。 状況の説明をしてくれ。 そのまま有無を言わさず引っ張られた手はシンクに突っ込まれ、手のひらに大量の水が注がれる。 何がなんだか分からずそれをぼんやりと見つめていると、ドンッ、と、背中からの衝撃に内蔵が揺れた。 おぅあぁ?痛くはないが、いま背骨から変な音したぞ。 『こんの、バカ!鳥頭かよクズ!!』 「えっ、なに」 『鍋を掴む時は鍋つかみ使えって、散々言ってたよなぁ!?』 「あぁ、まだ熱かったのか、アレ」 『ふざけんなボケジジィ!!』 背中を叩く手から体の内側に響くリズムに、彼らの反応の理由を理解する。 そういうことか。 背中の衝撃越しに、文字通り叩きつけられる説教を甘んじて受け入れながら振り返れば、きっくんがタオルと救急箱を用意してくれていた。 うっ、視線が痛い。 それに頷いたあろまが、再び手を引いてくる。 蛇口の下から出てきた手には鉄板の持ち手の形にくっきりと焼き跡がついていて、皮膚が赤く引き攣れて幾何学模様を作り出していた。 げっ、これ動かしづらくなるんだよな。 「もぉー鉄板持つときは気をつけろって言ってんでしょーが」 「しょうがないだろぉ。 熱いとかおれ、わかんねぇし」 嗜めるように額をつつくきっくんに唇を尖らせてすねて見せれば、柔らかく目尻を下げて頭を撫で回される。 やめろ、ガキ扱いすんな。 そんなやり取りを呆れ顔で見やりながら器用に包帯を巻いてくれたあろまは、薬を薬箱に戻しながら指先でトトトンッとキッチン台を叩いた。 『今日、ぴーすけ来るから』 「あぁうん、きっくんから聞い……あっ」 『ミクとメグも呼ぶから』 「えっ、ちょっとまっ」 『安心しろや。 その手の惨事については、オレから、直々に、事細かに、くわし~く伝えといてやるからよ』 「いやいらな」 『あ"ぁ"?』 「アッ、ハイ。 スミマセン」 しまった、これはまずい。 あろまの妹でおれらにとっても大切な妹分であるぴーすけはもちろん、FBの仕事がきっかけで友達になった大人気ネットアイドルユニット『BLUE』のミクとメグに、おれらはすこぶる弱い。 前に仕事で屋根から落ちて片足を変な方向に曲げたまま帰ったら、たまたま遊びに来てた彼女達にそれはもう大層可愛らしく叱られた。 ぴーすけは兄に似てしまった毒舌で罵りながら隠しきれない涙を必死にこらえてるし、対してミクは号泣しながら『いたっいたっ痛い、これ痛いですよね!?えっと、痛いの痛いの飛んでいけーー!私のところに飛んでこーい!!』と、歌姫の美声を持ってなつかしの歌 ? を唱えながら部屋中を跳ねまくるし、だが待て、おれに痛みはないから大丈夫だから年頃の女の子がそんな短いスカートで跳ねるんじゃありません落ち着けと、我ながら支離滅裂な説明をして宥めようと声をかけたら、メグが『コレ!コレ添え木!!添え木にできます!!』と割る前の太い薪木を抱えて来たところ、すっ転んでおれの額をへこませた。 なんというか阿鼻叫喚の図を作り出しながら治療してくれたのだが、その後も完治するまで忙しいだろうに、時間を作って家に通いつめてくれたのだ。 女の子を泣かせたという事実と可愛らしく叱る声とその後も心配をかけさせてしまった罪悪感で、一週間は夢にうなされた。 これは精神的に辛い。 再び訪れそうな 俺にとっての 地獄絵図に思わず口端を引き攣らせる。 やばい、逃げたい。 というかさっきからおれにとってやばいことしかないすでに辛い。 「あっあろまサン……この事はどうか内密に……」 『オレはいいけどぉ?お前、その手を見られて弁解できんのぉ?』 「ムリだわ」 『諦め早ぇえなオイ』 いいや、説明とかはFB辺りに押し付けて逃げよ。 浅はかな考えを読み取ったのかどうか、再び深々とため息を吐いたあろまに先導されてテーブルへ戻るれば、キッチンでの会話が聞こえていたのだろう。 既に今起こった出来事を察したFBが、あぁーあまたやっちゃったんですかぁーとからかい顔でこちらに手を伸ばしてくる。 うるせぇーとぶすくれながらその手に顔を寄せれば、きっくん曰くふくふくとしているという手が、ぺたぺたと触ってくる。 「うっわ、冷たッ!えっ!?腕冷たッ!ってなんで半袖なのさあんた!?」 「いや、適当にそこにあったから、着た」 「なんで真冬に半袖シャツ出して……いやそれを差し置いてもバカなの!?バカじゃないの!?外見てみろや身の毛もよだつ真っ白ワールド広がってんでしょが!」 「えっ、雪積もってんの?うわっ、移動面倒だなぁー。 ……んっ?てか、おまえも見えてなくない?」 「お黙り!口答えするんじゃありません!」 『オカンかよ』 呆れ顔のあろまに、心の中で激しく同意した。 しばらくじっとしてれば満足したのか離れたようとした手は最後にぺちりと額を叩いてきた。 「……なんだよ」 「手のことでぇ~す。 ごまかすの、手伝ってあげないからね」 「うぇー?ナンデェー?」 「いやいや、自業自得でしょーよ。 ぴぃちゃん達にしっきゃりしきゃられなしぇー……」 「しっきゃり?」 『しっきゃられ?』 「なしぇーって、なにぃいぃ?」 「ガハハハハ!うるさいわ!」 再びぱたぱたと手を振り出したFBの手をあろまと止めれば、きっくんの手元のフライパンから、各席に並べられた皿にベーコンと目玉焼きが滑ってくる。 ぷるんと揺れた艶やかな黄身に忘れかけた腹の音が再び合唱を響かせた。 「あははっ!まぁとりあえず、ごはんにしようぜ!」 『うぇーい。 FB、茶はここに置いてっからな。 零すなよ』 「ありがと、あろましゃん!きっくん、今日のメニューは?」 「手作りドレッシングサラダにハムエッグにエビとホタテのパエリア!あとあろま絶賛の激うまコンソメスープ!!」 「いいねぇ!さっすがきっくん!」 『絶賛んぅ?そこまで褒めた覚えはねぇぞハゲ』 「あろま、俺にもお茶くれぇー」 「あっ、目玉焼きにかけるもんココに揃えてるぞぉ」 「あぁ、ありがときっくん」 「ケチャップくださーい」 「はいよ!」 『オレしょーゆ』 「はいはい!えおえおは今日はつける?」 「いや、今日はいいや……それよか、あのぉ、パエリアを箸で食うのは、さすがに無理がないっスかねぇ?」 「なんとかなるなる!」 『なんとかしろしろ』 「なせばなれだぞえおえお君!!」 「うぇー」 「ほいほーい!お前ら出揃ったかぁー」 「はーい」 「おーう」 『へいよー』 「そんじゃま、皆さんお手を拝借!せーの!!」 「「「『いただきまーす』」」」 なんてことない日の、お前らとの今日も格別賑やかな始まり FB!今日の晩飯のおにぎり、作るの手伝ってくれ! いいけど、具は何にするの? えおえおリクエストのやつと、定番梅干しさんと鮭フレさん。 えおえおーえおえおー!」 『うるせぇぞハゲ!』 「ほんとさ!」 「やったことは無いけど、とりあえず、火ぃ付ければいいんだべ?」 「えっ?何かきゃんがえがあんの、隊長?」 「あー……しらねぇ」 「ないんかーい!ちっとは考えろや!」 「うるせぇーじゃあなんか案があるなら言ってみてくださぁーい」 「…………」 「…………」 「ガハハハハッ!」 「なんだコイツ」 「ねぇねぇ見てみて!」 「なにかね、きっくん!」 「見ろよコレ、最強じゃね!?」 「はい?何が……ひぃ!!」 「いぇーい!チャッカメェーン!」 「あっぶな!!いきなり耳元で点けんなや燃やす気か!!」 「イェーイ!ヒュゥイゴー!!」 「きっくん、元気だなぁ」 「呑気か!もぉーさむいよぉー。 誰かホットドリンクくれよぉー」 「…………!」 ガサゴソ 「てかさ、こういうときはまず火種を「チャッカメェン二刀流ぅ!!」だぁー!遊んでないで聞けや!人の話をよぉ!!」 「えぇー、ダメぇー?」 「ダメとかひょういう問題!?こちとら死活問題やぞ!!」 「…………」 ひょい 「ん?あぁ、あろまか。 気まぐれで夜はバーとして開くこともある。 味が分からないため、カフェの料理はあろま FB・eoheohは味に対して大雑把なため に監修してもらい、あとは具材の色 焼き目や色の濃度 で判断している。 ほとんど店主の気分次第でメニューが変わるため、昨日食べたものが食べれるとは限らないが、どれを食べても美味しいため常連の足が耐えない。 とある研究所の薬物実験の後遺症で嗅覚を失う。 そのため味がわからず食事に一切の興味を持てずにいたところ、気まぐれでつくった料理を食べてFB達が笑ったのを見て本格的に作り始める。 というか俺がやらなきゃトンデモ料理制作人しかいねぇ!!お陰様で腕もあがり、その美麗な容姿もあいまって近所のご婦人方のアイドルとなっている。 FB777 職業:音楽家 症状:光視症 光が入りすぎるため、視界が白くなり目に激痛を伴う。 究極の意訳でたとえれば、高性能暗視スコープ 某にっこり投稿動画サイトにて細々と作曲した曲を上げていたところ、思わぬ所で当時動画サイト内にて歌唱力トップアイドルとされていたミクに見初められる。 彼女に請われ、こんな綺麗な声に歌ってもらえるならという軽い気持ちでいくつかの曲を作成したところ、年間TOP10を埋めるまさかの大ヒット。 そのままプロとしてメグとデビューしたミクに誘われ、「BLUE」の専属作曲家としてデビュー。 話題を呼び、その後はミク以外にも曲を作っていく。 普段はキーによって音が異なる自作パソコン Aはド、Sはミなど で作曲する。 きっくんに手伝ってもらった曲も多くある。 とある ryにて視覚を著しく弱める。 窓も証明もない地下のような場所ではハッキリと見える。 夜目に特化した分、光のある場所では眩し過ぎて何も見えず、激痛を伴う。 そのため常に瞳を閉じ、遮光性の高いサングラスで覆っている。 本人はそれほど不便に感じていないが、とても美しい青の瞳が隠されるてしまいつまらないと、あろまとえおえおがこっそりと不機嫌になったのことをきっくんは知っている。 aromahotto 職業:写真家 症状:聴覚障害 音が聞こえない、それに伴い言葉を発しづらい 現在様々な大手会社よりポスターの依頼や雑誌の特集を組まれる話題の風景写真家。 もともと旅好きで、その風景を家族へ伝える手段として写真をはじめる。 その、まるで語りかけるような光と影の世界と時折写り込む仲間の楽しげな後ろ姿が話題となり、若者から高年層にも好評となる。 とある ryにて聴覚を失う。 それに伴い、言葉を発音しづらくなった。 仕事場などでは手話で会話し、ぴーすけに通訳を頼むが、手話だとFBが分からないため、家ではモールス信号にて会話をする。 相手の言葉は読唇術にて読み取る。 話せなくなった事に関して本人は不便に感じていないが、少し高いその透き通る声がお気に入りだったFBから請われ、時折歌を歌うこともある。 eoheoh 職業:なんでも屋 症状:無痛症[? ] 痛み・感触・温度など、触れて感じる全てがわからない。 なぜか味覚だけはある 近所のおじさんおば様方から孫のように可愛がられているなんでも屋。 身体能力の高さと器用さの使い道を考えた結果、なんでも屋を始めたら思いのほか好評となった。 今や各方面から引っ張りだことなっている。 とある ryにて触覚を失う。 痛みや熱を感じないため、割と洒落にならない怪我をおうこともしばしば。 その度に仲間に怒られる。 けれどもともと自分に対して大雑把な性格なため、効果はお察しの通り。 身体能力の高さと痛みへの恐怖心のなさを生かしてなんでもこなしてしますが、頼むからもう少し体を大切にしてくれぴーすけ達を泣かすぞ。 大手編集社へ務め、あろまを写真界の時の人とすることに多いに腕を奮った敏腕編集者。 自他ともに認めるブラコン。 あろまが一番だが、負けないくらいFB達も大切で大好き。 自分がみんなに愛されていると自覚がある為、時に無茶なおねだりをすることも。 それを仕方ないなと笑いながら叶えてくれる家族が大好き。 ランチには必ずきっくんのお店へ食べにくる。 きっくんのご飯食べないと午後の業務なんてやってられないわよ!!仕事の関係で知り合った「BLUE」のミクとメグとは親友。 ミク 職業:ネットアイドル 愛らしい容姿と絶大な歌唱力をもってネットアイドルから世界へと羽ばたく現在人気ナンバーワンのアイドル。 某にっこり動画にて一目惚れならぬ一聞惚れをしたFBを探し出し曲作りを頼むなど、超アグレッシブ。 実はこっそりFBに想いを寄せており、割と周りにバレバレなのだが向けられている当の本人が欠片も気がついていないため今日も元気に恋する乙女は熱唱する。 はよ結婚しろ。 メグ 職業:ネットアイドル 爽やかな容姿と流暢な歌唱力をもって、ミクとともに世界へ羽ばたくアイドル。 もともとミクとは幼馴染の中で、ミクから誘われこの世界へ飛び込む。 ミクの恋を応援しているが、なかなか進展しない中にもやもやしつつ、二人らしいかとぴーすけと共に微笑ましく見守っている。 自他ともに認めるおっちょこちょい。

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#2 なんでもない日

養豚場 ざんちょ

美味しいがわからないカフェのマスターと 音符の見えない作曲家と 言葉で伝えられない写真家と 触れる手の柔らかさがわからない便利屋の、あたたかでいつもの朝ごはんのお話。 本作に関しては決してお名前をお借りしております方々及び、身体に障害をお持ちの方々を中傷、軽んじる意向はない旨、ご理解いただければ幸いです。 並びに、誹謗・中傷の目的で書かれたものではないことをご理解ください。 なんでもない日、今日。 [newpage] 朝を知らせる鳥がやっとこさ鳴き始めた、お日様もまだまだ眠たげな時間。 「うへぇ、さっぶぃ~」 首に巻いたストールを手繰り寄せ、部屋の端へと足音を鳴らす。 駆け寄った先にある年の過ぎ去りを感じさせる哀愁と趣ある重厚感を持って鎮座しているそれは、どれだけ磨いても煤のお化粧がぶ厚いおばあちゃんストーブだ。 「おはよ、今日も美人さんだな!」 朝の挨拶をしながら、火種となる小枝を組んでいく。 いつの間にか習慣となっていたおばあちゃんへの挨拶は、誰が始めたのか。 草木に水をやるように毎日毎日、皆で声をかける。 おかげ様で、今日もあったかいっす。 美味い芋が焼けたわ、サンキュ。 今日もお疲れ様でした、ありがとう。 そうやって声をかけながら火を灯すと不思議と火の付きが良く、部屋への熱がご機嫌に広がる気がするのだ。 聞いたことない?物にもね、大事に大事にすると、心が宿るんだって。 ふくふくと柔らかに揺れるFBの声が、耳の奥をくすぐる。 ふふっ。 つられて笑いながら順に大きめの薪をくべれば、おばあちゃんもつられたみたいだ。 パチリッパチリッと品のいい笑い声が、部屋に優しく広がってゆく。 うん、今日もご機嫌みたいだ。 よかったよかった。 しばらく楽しげに揺らぐあかいろを眺めていたが、熱の前から動きたがらない足を叱咤してキッチンへ向かう。 あろまが買ってきてくれたアルパカのスリッパがもふりもふりと床を跳ねた。 さて、朝食の献立はどうするか。 FBが誕生日にくれた黒のエプロンを手に取って、リビングを見回す。 まだ寝ぼけまなこな太陽の淡い光に浮き出され、えおえおが一目惚れした妙にリアルなクマのクッションがソファーの上から静かにこちらを伺っていた。 おはよー、オマエも何か食う? 昨日仕込んでおいたサラダとパエリアとスープをそれぞれ取り出し、温めるものは火にかける。 あと一品欲しいかな。 ちょうど昨日、カフェの常連さんから貰ったベーコンと卵があるから、新鮮な内に頂こうか。 シンプルにベーコンエッグがいいかな。 ほくほくとしながら冷蔵庫からベーコンと卵を取り出して、コンロにフライパンを用意する。 フライパンを火にかけながら包から取り出したベーコンは肉厚で、赤身と脂身のコントラストとが艶やかに目に焼き付き、このままかぶりつきたくなるような艶めかしさで誘惑してきた。 さっすがその道三十年のベテラン養豚職人の愛を注がれた豚さんだ。 朝食に使い切るにはもったいない気がする。 肉厚な二枚を縦横半分に切って、残った分はバーの一品として取っておこうかな。 残り分をこそっと冷蔵庫の奥に忍ばせてからコンロを伺えば、いい具合にフライパンから熱が伝わってくる。 そこにオリーブオイル薄く広げ、ベーコンを重ならないよう並べていく。 気持ちは某ジ〇リ作品の、イケメン魔法使いだ。 じゅわっと油を跳ねさせ、早速色味を増してきたベーコンの艷やかさに蕩けるように見惚れていれば、ガチャリっと扉が開く音がした。 続いて響いた床を叩く音に振り返る。 そこには見慣れたサングラスの男が、コツッコツッと足元を白い杖で叩きながらキッチンに入ってくるところだった。 おっ、同居人第一号のお目覚めだ。 さてさて、愉快な朝食が、そろそろ始まる。 [newpage] 「おはよー、FB」 「おはよう、きっくん」 挨拶と共にこちらに伸ばされた手に、火を止ながら背をかがめる。 頬に触れた手が、額に、首筋に、肩に、撫でるように触れるのをその手が満足するまで待てば、手のひらと同じ柔らかに頬を緩めてFBが笑う。 「うん、きっくんは今日も元気だね!」 「おう!俺様は毎日がスーパーディだからな!!」 「ガハハっ、それは逞しいですなぁ!何か手伝えることはある?」 「うーん、あとはベーコンと卵を焼くだけだから特にないぞ!」 「りょーかい!じゃあ、箸だけ並べておくねぇ~」 再び杖で床を叩き、引き出しから四膳の箸を取り出してテーブルへ向かう。 そうして一つ一つの箸の彫り絵を指先で確かめながら、それぞれの持ち主の席へと並べていく。 ねーこさんはあろま、とーりさんはきっくん、しーかさんのえおえーお、わーんちゃんのおーれ。 じゃれあうように心地よく響くハミングが、柔らかに食卓に広がる。 それに耳を傾けながらフライパンの火をつけ直し、蓋を上げればむわりと顔を覆う湯気の先でパチリッと香ばしい赤色が弾ける。 よしよし、いい色だ。 ヘラでベーコンをひっくり返して、ちょうどいい位置に卵を四つ。 再び蓋をすればガチャリと二度目の扉が開く音に、ストーブで温められた空気が揺れる。 振り返れば眠たげなあかいろが、ぐぅっと背を伸ばしながら冷蔵庫からペットボトルを取り出していた。 「おはよー、あろま」 「…………」 軽く手をあげて口を開いたと思ったら、おおきなあくび。 昨日塀の上で見た、猫さんのような呑気なあくびだ。 「珍しく早起きだなぁ。 今日はぴーすけちゃんのとこ?」 こくりと縦に首を降ったあろまは、眠気覚ましのつもりかコップに注いだ水を一気に飲み干す。 それでもまだ眠たげに目をこする彼の鼻先にそっとスプーンを寄せれば、おとなしくぱくりと開いた口。 子猫みたいだと笑いながら掬ったスープをふくませた。 しばらくすると、落ちかけた瞼がふるりと揺れる。 どうやらお気に召したようだ。 「ヨッシャ!今日のカフェスープは決まりだな!いつもありがとなぁ。 俺じゃあ味わかんないから、調整してもらえるの助かるわ!」 お礼も兼ねて、星型の人参を掬っては口の中に放り込んでやる。 花を飛ばしながら再びもごもごとするあろまに満足気にうなづいていれば、くいっと手を引かれた。 引かれるままに差し出した手のひらを、トンッと柔らかい指先が叩く。 ふふっ、そっか。 ありがとう!」 トンッと手のひらを叩く指先とそれが伝えてくれた言葉のくすぐったさに笑えば、あろまも優しく笑いかえしてくれる。 握られた手も、その笑顔も、あったかい。 うん、あったかいなぁ。 あったかさに頬を緩めれば、ふいに目をそらしたあろまは手近にあったサラダが盛り付けられたボウルを持って、テーブルへ向かっていった。 寝癖がはねた髪からのぞく耳が赤いのがバレバレですよ、あろまさん。 楽しい朝食を予告するように、パチリッと色づくベーコンが笑った。 さてさて、賑やかな朝食がそろそろ始まる。 [newpage] テーブルにボウルを置き、そのままいつもの席につく。 音に反応したのか、ノートパソコンを使って作業をしていたFBが顔を上げた。 「おはよう、あろま」 「…………」 挨拶と共に伸ばされた手に、眉根をぎゅっとさせながら顔を寄せる。 中途半端に腰を曲げるのは少し苦しいが、ため息をのみこんで頬を撫でる手が満足するまでおとなしく身をゆだねる。 無遠慮に触れられるのは正直好きではないが、FBのこれは、ただのスキンシップではない。 目が見えない分触覚が鋭敏になっているその指先で、肌のはりや体温、脈拍を確認し、いわゆる触診のようなものでオレたちの健康状態を確認している。 触診とはいうもののFB自身に医学の知識は無い。 それでも、 「あぁ、よかった!昨日まで少し熱っぽかったけど、今日は治まってるみたいだね。 最近雪の中での撮影が多いから、風邪には気をつけなきゃダメだよ?」 確かに、最近身体がだるく感じる事はあった。 もちろんFBにも誰にも言ったことは無い。 が、どうやらバレバレだったようだ。 お前はオカンか。 「珍しくネクタイ締めてるみたいだけど、今日は撮影の日?」 ふるりと首を振って、頬に添えられままの手をとる。 その上をトントントンッと指先で叩けば、あぁ、とFBがにこやかに笑った。 「そっか、写真集の新刊の発売日がもうすぐだっけ!打ち合わせは、ぴぃちゃんも一緒に?」 『まぁな。 なんかぴぃが張り切っててさ』 「そりゃあ大好きなお兄ちゃんの写真集だもん。 敏腕出版社員としては、張り切るでしょうよ」 『……そういってアイツ、最近会社に泊まり込みで家にも帰ってねぇ』 「そういえば、変わらずランチ時間には来てくれるけど、十分もせず帰っちゃうってきっくんが言ってたような……」 『…………』 「そうだ!ねぇあろま、打ち合わせが終わったら、ぴぃちゃんを誘ってきなよ!」 『…………!』 「久しぶりに、みんなできっくんのおいしいごはん食べようよ!ねっ?」 『うん……サンキュ』 オレ、おいしいサラダが食べたい。 そうリクエストすれば、FBがくふくふ笑いながらきっくんに伝えてくれる。 そうするとキッチンから元気のいい笑顔が覗いてきた。 遠くからでも見えやすいようになのか、大きく動いた口から『きっくん特製、古に伝わりしスーパー栄養マンスペシャルメニューにするな!』とぴょんぴょん跳ねまわる、音のない言葉が踊る。 相変わらず意味はわからないが、美味しいごはんを作ってくれることは間違いない。 おう、夜が楽しみだわ。 感謝の言葉を机を叩くリズムで伝えれば、今度は親指をたてた手が力強く突き出してきた。 待てよ、これ、逆に張り切り過ぎて五人では食べきれない大量の料理を生み出さないよな?それはそれで自分が処理してもいいが、予定が空いるようならミクとメグも誘おうか。 ひとまずLINEだけ送っておこうとスマホを取り出せば、リビングの扉が開く。 そこから瞼を擦りながら、いまにも立ったまま寝息をたてそうな男が顔を出した。 どうやら最後の住人も起きてきたようだ。 さてさて、騒がしい朝食が、そろそろ始まる。 [newpage] 「おはよー、えおえお」 「おはよ、きっくん」 ふらふらと頭を揺らしながらなんとかシンクまでたどり着けば、苦笑いを浮かべたきっくんが首に巻いていたストールをオレの肩に掛けてきた。 えっ、ナンデスカ?いやいや、なんで真冬に半袖だよ、見てるこっちが寒いわ。 と、母親のようなお節介に、首をひねりながらもおとなしく引っ掛けたたままにする。 今日、そんなに寒いんだ。 「あれ?あろまがスーツ着てる。 仕事?」 「今日は出版社で打ち合わせみたいだぞぉ。 えおえおは?朝から仕事?」 「うん。 隣町のじいちゃんとこの、牛の世話の手伝い」 「あぁ、じいちゃんとこの息子さん、いま出張中だもんな。 それだけ?」 「その後も何件かあるけど……なに?今日なんかあったっけ?」 「ちょうどいまさ、晩飯にぴーすけちゃん誘おって話してたのよ!えおえおは帰り遅くなりそう?」 「いや、たぶん夕方くらいには帰ってこれると思うよ」 「おっ、じゃあちょうどいいな!なんかリクエストある?」 「うーん、なんでもいいけど……おにぎり作るなら、具はおかかと肉味噌がいいっす」 「ははっ、りょーかい!」 きっくんが両手で作った三角形を覗き込みながら無邪気に笑う。 あっ、まずいこれ、あれだ。 前にロシアンルーレットたこ焼きをしれっと出してきた時と同じ顔してる気がする。 しまった、余計な助言をしてしまった。 変なもの入れないように後であろまに見張りを……あれ?あろまも仕事って言ってたから、今日家に居るのはもしかしなくとも、昨晩家にこもって作曲に専念すると言っていたFBだけ……。 瞬間的に脳裏に浮かんだ、二人でプリンを作ったと言って差し出されたブルーオーシャンプリンとレバープリンという名の劇物デュエット。 芋づる式に引っ張りだされるその他もろもろの産物の記憶に当時の惨劇を思い出しては、胃がキリキリと音を立てる。 今日帰りに、胃腸薬買っとこうかな………。 「あんま、無茶なことはするなよ……」 「ん?何か言ったぁー?」 「イエ、ナンデモナイデス。 しっかし、いっぱい作ったなぁ。 どれ持ってけばいい?」 「あっ、じゃあそこのパエリアお願い!」 「はーい」 指さされたコンロ上の鉄鍋のを覗き込んで、思わず感嘆のため息がこぼれる。 目の覚める艶々と輝く金色の米をキャンパスに、鮮やかな赤と黄色のパプリカ、瑞々しい海老とアサリが彩り良く並べられ、更にパセリの緑色が全体の色を締めるように散らされている。 鉄板を持ち上げれば、サフラン独特の華やかな香りと魚介の芳ばしい香りが鼻先をくすぐり、その美味なる味を脳裏に呼び起こす。 思わずごくり、と喉が鳴った。 腹をきゅるきゅると鳴らしながら運んだ鍋をテーブルの上の鍋敷きに置けば、既に席に付いていた二人がそれぞれに、朝の挨拶を投げかけてくれる。 「おはよう、えおえお」 「…………」 「おはよ、FB、あろま」 いつも通りに軽く声をかければ、柔らかな頬にふくりと幸福を含ませて、FBが笑う。 なんだかいいことがあったようだ。 たぶん、ぴーすけが来るからかなぁ。 妹分として可愛がっているぴーすけが、最近忙しくて遊びに来れないことを前にいじけてたしな。 微笑ましい気持ちになりながら、席に着こうと顔を上げる。 途端、視線の先であかいろがびたりッ、と瞬きを止めて固まっていた。 えっ、なに?おい、どうした。 「あろ「あぁーーーーーー!!!」まおぉう?」 あろまに声をかけようとした途端、キッチンからきっくんの雄叫びが響きわたる。 うるせぇーな。 なにごとかと振り返れば、驚き顔のきっくんが目を見開いて鍋つかみを握りしめていた。 なんだ?鍋つかみに黒光りする悪魔でも潜んでたのか? 「え、お、え、おぉおお!!!」 悪魔じゃなかった。 えっ、おれ?おれですかナンデ? カッ!っと見開くきいろに昨晩のホラゲのキャラを思い出しそうになって反射で目をそらせば、そらした先でもクワッ!っと歯をむくあかいろが背後に般若を背負っているではないか。 うえっ、こわい。 般若の目から逃れるようにさらに首ごと目をそらせた先で、きっくんの声に反応したFBが何事かと手を伸ばしてぱたぱたとさせていた。 おいやめろ、勢いあまって皿に当たりそうだ。 悲惨な未来を防ごうとFBに伸ばした手は、けれど細い腕に横からかっ攫われそのままキッチンへと連行されてしまう。 訳も分からず引かれるまま、代わりにFBに声をかけて止めてくれたきっくんを手を引くあろま越しに見上げれば、苦笑いをこぼしたきいろが細まる。 待て、その呆れ顔はなんなんだ。 状況の説明をしてくれ。 そのまま有無を言わさず引っ張られた手はシンクに突っ込まれ、手のひらに大量の水が注がれる。 何がなんだか分からずそれをぼんやりと見つめていると、ドンッ、と、背中からの衝撃に内蔵が揺れた。 おぅあぁ?痛くはないが、いま背骨から変な音したぞ。 『こんの、バカ!鳥頭かよクズ!!』 「えっ、なに」 『鍋を掴む時は鍋つかみ使えって、散々言ってたよなぁ!?』 「あぁ、まだ熱かったのか、アレ」 『ふざけんなボケジジィ!!』 背中を叩く手から体の内側に響くリズムに、彼らの反応の理由を理解する。 そういうことか。 背中の衝撃越しに、文字通り叩きつけられる説教を甘んじて受け入れながら振り返れば、きっくんがタオルと救急箱を用意してくれていた。 うっ、視線が痛い。 それに頷いたあろまが、再び手を引いてくる。 蛇口の下から出てきた手には鉄板の持ち手の形にくっきりと焼き跡がついていて、皮膚が赤く引き攣れて幾何学模様を作り出していた。 げっ、これ動かしづらくなるんだよな。 「もぉー鉄板持つときは気をつけろって言ってんでしょーが」 「しょうがないだろぉ。 熱いとかおれ、わかんねぇし」 嗜めるように額をつつくきっくんに唇を尖らせてすねて見せれば、柔らかく目尻を下げて頭を撫で回される。 やめろ、ガキ扱いすんな。 そんなやり取りを呆れ顔で見やりながら器用に包帯を巻いてくれたあろまは、薬を薬箱に戻しながら指先でトトトンッとキッチン台を叩いた。 『今日、ぴーすけ来るから』 「あぁうん、きっくんから聞い……あっ」 『ミクとメグも呼ぶから』 「えっ、ちょっとまっ」 『安心しろや。 その手の惨事については、オレから、直々に、事細かに、くわし~く伝えといてやるからよ』 「いやいらな」 『あ"ぁ"?』 「アッ、ハイ。 スミマセン」 しまった、これはまずい。 あろまの妹でおれらにとっても大切な妹分であるぴーすけはもちろん、FBの仕事がきっかけで友達になった大人気ネットアイドルユニット『BLUE』のミクとメグに、おれらはすこぶる弱い。 前に仕事で屋根から落ちて片足を変な方向に曲げたまま帰ったら、たまたま遊びに来てた彼女達にそれはもう大層可愛らしく叱られた。 ぴーすけは兄に似てしまった毒舌で罵りながら隠しきれない涙を必死にこらえてるし、対してミクは号泣しながら『いたっいたっ痛い、これ痛いですよね!?えっと、痛いの痛いの飛んでいけーー!私のところに飛んでこーい!!』と、歌姫の美声を持ってなつかしの歌 ? を唱えながら部屋中を跳ねまくるし、だが待て、おれに痛みはないから大丈夫だから年頃の女の子がそんな短いスカートで跳ねるんじゃありません落ち着けと、我ながら支離滅裂な説明をして宥めようと声をかけたら、メグが『コレ!コレ添え木!!添え木にできます!!』と割る前の太い薪木を抱えて来たところ、すっ転んでおれの額をへこませた。 なんというか阿鼻叫喚の図を作り出しながら治療してくれたのだが、その後も完治するまで忙しいだろうに、時間を作って家に通いつめてくれたのだ。 女の子を泣かせたという事実と可愛らしく叱る声とその後も心配をかけさせてしまった罪悪感で、一週間は夢にうなされた。 これは精神的に辛い。 再び訪れそうな 俺にとっての 地獄絵図に思わず口端を引き攣らせる。 やばい、逃げたい。 というかさっきからおれにとってやばいことしかないすでに辛い。 「あっあろまサン……この事はどうか内密に……」 『オレはいいけどぉ?お前、その手を見られて弁解できんのぉ?』 「ムリだわ」 『諦め早ぇえなオイ』 いいや、説明とかはFB辺りに押し付けて逃げよ。 浅はかな考えを読み取ったのかどうか、再び深々とため息を吐いたあろまに先導されてテーブルへ戻るれば、キッチンでの会話が聞こえていたのだろう。 既に今起こった出来事を察したFBが、あぁーあまたやっちゃったんですかぁーとからかい顔でこちらに手を伸ばしてくる。 うるせぇーとぶすくれながらその手に顔を寄せれば、きっくん曰くふくふくとしているという手が、ぺたぺたと触ってくる。 「うっわ、冷たッ!えっ!?腕冷たッ!ってなんで半袖なのさあんた!?」 「いや、適当にそこにあったから、着た」 「なんで真冬に半袖シャツ出して……いやそれを差し置いてもバカなの!?バカじゃないの!?外見てみろや身の毛もよだつ真っ白ワールド広がってんでしょが!」 「えっ、雪積もってんの?うわっ、移動面倒だなぁー。 ……んっ?てか、おまえも見えてなくない?」 「お黙り!口答えするんじゃありません!」 『オカンかよ』 呆れ顔のあろまに、心の中で激しく同意した。 しばらくじっとしてれば満足したのか離れたようとした手は最後にぺちりと額を叩いてきた。 「……なんだよ」 「手のことでぇ~す。 ごまかすの、手伝ってあげないからね」 「うぇー?ナンデェー?」 「いやいや、自業自得でしょーよ。 ぴぃちゃん達にしっきゃりしきゃられなしぇー……」 「しっきゃり?」 『しっきゃられ?』 「なしぇーって、なにぃいぃ?」 「ガハハハハ!うるさいわ!」 再びぱたぱたと手を振り出したFBの手をあろまと止めれば、きっくんの手元のフライパンから、各席に並べられた皿にベーコンと目玉焼きが滑ってくる。 ぷるんと揺れた艶やかな黄身に忘れかけた腹の音が再び合唱を響かせた。 「あははっ!まぁとりあえず、ごはんにしようぜ!」 『うぇーい。 FB、茶はここに置いてっからな。 零すなよ』 「ありがと、あろましゃん!きっくん、今日のメニューは?」 「手作りドレッシングサラダにハムエッグにエビとホタテのパエリア!あとあろま絶賛の激うまコンソメスープ!!」 「いいねぇ!さっすがきっくん!」 『絶賛んぅ?そこまで褒めた覚えはねぇぞハゲ』 「あろま、俺にもお茶くれぇー」 「あっ、目玉焼きにかけるもんココに揃えてるぞぉ」 「あぁ、ありがときっくん」 「ケチャップくださーい」 「はいよ!」 『オレしょーゆ』 「はいはい!えおえおは今日はつける?」 「いや、今日はいいや……それよか、あのぉ、パエリアを箸で食うのは、さすがに無理がないっスかねぇ?」 「なんとかなるなる!」 『なんとかしろしろ』 「なせばなれだぞえおえお君!!」 「うぇー」 「ほいほーい!お前ら出揃ったかぁー」 「はーい」 「おーう」 『へいよー』 「そんじゃま、皆さんお手を拝借!せーの!!」 「「「『いただきまーす』」」」 なんてことない日の、お前らとの今日も格別賑やかな始まり FB!今日の晩飯のおにぎり、作るの手伝ってくれ! いいけど、具は何にするの? えおえおリクエストのやつと、定番梅干しさんと鮭フレさん。 えおえおーえおえおー!」 『うるせぇぞハゲ!』 「ほんとさ!」 「やったことは無いけど、とりあえず、火ぃ付ければいいんだべ?」 「えっ?何かきゃんがえがあんの、隊長?」 「あー……しらねぇ」 「ないんかーい!ちっとは考えろや!」 「うるせぇーじゃあなんか案があるなら言ってみてくださぁーい」 「…………」 「…………」 「ガハハハハッ!」 「なんだコイツ」 「ねぇねぇ見てみて!」 「なにかね、きっくん!」 「見ろよコレ、最強じゃね!?」 「はい?何が……ひぃ!!」 「いぇーい!チャッカメェーン!」 「あっぶな!!いきなり耳元で点けんなや燃やす気か!!」 「イェーイ!ヒュゥイゴー!!」 「きっくん、元気だなぁ」 「呑気か!もぉーさむいよぉー。 誰かホットドリンクくれよぉー」 「…………!」 ガサゴソ 「てかさ、こういうときはまず火種を「チャッカメェン二刀流ぅ!!」だぁー!遊んでないで聞けや!人の話をよぉ!!」 「えぇー、ダメぇー?」 「ダメとかひょういう問題!?こちとら死活問題やぞ!!」 「…………」 ひょい 「ん?あぁ、あろまか。 気まぐれで夜はバーとして開くこともある。 味が分からないため、カフェの料理はあろま FB・eoheohは味に対して大雑把なため に監修してもらい、あとは具材の色 焼き目や色の濃度 で判断している。 ほとんど店主の気分次第でメニューが変わるため、昨日食べたものが食べれるとは限らないが、どれを食べても美味しいため常連の足が耐えない。 とある研究所の薬物実験の後遺症で嗅覚を失う。 そのため味がわからず食事に一切の興味を持てずにいたところ、気まぐれでつくった料理を食べてFB達が笑ったのを見て本格的に作り始める。 というか俺がやらなきゃトンデモ料理制作人しかいねぇ!!お陰様で腕もあがり、その美麗な容姿もあいまって近所のご婦人方のアイドルとなっている。 FB777 職業:音楽家 症状:光視症 光が入りすぎるため、視界が白くなり目に激痛を伴う。 究極の意訳でたとえれば、高性能暗視スコープ 某にっこり投稿動画サイトにて細々と作曲した曲を上げていたところ、思わぬ所で当時動画サイト内にて歌唱力トップアイドルとされていたミクに見初められる。 彼女に請われ、こんな綺麗な声に歌ってもらえるならという軽い気持ちでいくつかの曲を作成したところ、年間TOP10を埋めるまさかの大ヒット。 そのままプロとしてメグとデビューしたミクに誘われ、「BLUE」の専属作曲家としてデビュー。 話題を呼び、その後はミク以外にも曲を作っていく。 普段はキーによって音が異なる自作パソコン Aはド、Sはミなど で作曲する。 きっくんに手伝ってもらった曲も多くある。 とある ryにて視覚を著しく弱める。 窓も証明もない地下のような場所ではハッキリと見える。 夜目に特化した分、光のある場所では眩し過ぎて何も見えず、激痛を伴う。 そのため常に瞳を閉じ、遮光性の高いサングラスで覆っている。 本人はそれほど不便に感じていないが、とても美しい青の瞳が隠されるてしまいつまらないと、あろまとえおえおがこっそりと不機嫌になったのことをきっくんは知っている。 aromahotto 職業:写真家 症状:聴覚障害 音が聞こえない、それに伴い言葉を発しづらい 現在様々な大手会社よりポスターの依頼や雑誌の特集を組まれる話題の風景写真家。 もともと旅好きで、その風景を家族へ伝える手段として写真をはじめる。 その、まるで語りかけるような光と影の世界と時折写り込む仲間の楽しげな後ろ姿が話題となり、若者から高年層にも好評となる。 とある ryにて聴覚を失う。 それに伴い、言葉を発音しづらくなった。 仕事場などでは手話で会話し、ぴーすけに通訳を頼むが、手話だとFBが分からないため、家ではモールス信号にて会話をする。 相手の言葉は読唇術にて読み取る。 話せなくなった事に関して本人は不便に感じていないが、少し高いその透き通る声がお気に入りだったFBから請われ、時折歌を歌うこともある。 eoheoh 職業:なんでも屋 症状:無痛症[? ] 痛み・感触・温度など、触れて感じる全てがわからない。 なぜか味覚だけはある 近所のおじさんおば様方から孫のように可愛がられているなんでも屋。 身体能力の高さと器用さの使い道を考えた結果、なんでも屋を始めたら思いのほか好評となった。 今や各方面から引っ張りだことなっている。 とある ryにて触覚を失う。 痛みや熱を感じないため、割と洒落にならない怪我をおうこともしばしば。 その度に仲間に怒られる。 けれどもともと自分に対して大雑把な性格なため、効果はお察しの通り。 身体能力の高さと痛みへの恐怖心のなさを生かしてなんでもこなしてしますが、頼むからもう少し体を大切にしてくれぴーすけ達を泣かすぞ。 大手編集社へ務め、あろまを写真界の時の人とすることに多いに腕を奮った敏腕編集者。 自他ともに認めるブラコン。 あろまが一番だが、負けないくらいFB達も大切で大好き。 自分がみんなに愛されていると自覚がある為、時に無茶なおねだりをすることも。 それを仕方ないなと笑いながら叶えてくれる家族が大好き。 ランチには必ずきっくんのお店へ食べにくる。 きっくんのご飯食べないと午後の業務なんてやってられないわよ!!仕事の関係で知り合った「BLUE」のミクとメグとは親友。 ミク 職業:ネットアイドル 愛らしい容姿と絶大な歌唱力をもってネットアイドルから世界へと羽ばたく現在人気ナンバーワンのアイドル。 某にっこり動画にて一目惚れならぬ一聞惚れをしたFBを探し出し曲作りを頼むなど、超アグレッシブ。 実はこっそりFBに想いを寄せており、割と周りにバレバレなのだが向けられている当の本人が欠片も気がついていないため今日も元気に恋する乙女は熱唱する。 はよ結婚しろ。 メグ 職業:ネットアイドル 爽やかな容姿と流暢な歌唱力をもって、ミクとともに世界へ羽ばたくアイドル。 もともとミクとは幼馴染の中で、ミクから誘われこの世界へ飛び込む。 ミクの恋を応援しているが、なかなか進展しない中にもやもやしつつ、二人らしいかとぴーすけと共に微笑ましく見守っている。 自他ともに認めるおっちょこちょい。

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